本研究について

本研究への御協力のお礼

 

 この度は,お忙しい中,本研究のアンケートにご協力頂き,誠にありがとうございました。新型コロナウイルスの流行により,家にいることが増え,授業もオンラインとなり,SNS疲れなどが問題となっている中,1つ1つ真摯に回答してくださった皆さんのおかげです。そして,最終的には200名近くの方に回答を頂き,妥当性の高い研究を行うことができました。この場を借りて,改めてお礼申し上げます。

 

 

 

本研究の目的

 

 本研究は,「中学生の時の対人関係での傷つき経験」と「中学生の時の親からの受容経験」が,「現在の対人関係における敏感性」に与える影響について,検討することを目的としました。

 近年,HSPをはじめとして「敏感性の高さ」という特性が,大変注目されています。みなさんも一度は,テレビやメディアなどで,目にしたことがあると思います。

こういった特性が注目されている反面,新しい概念であるため,敏感性の高さを考慮した支援が欠けています。先行研究では,「敏感性の高さ」によって,不適応感を抱る一方で,特性をふまえた支援が行われていないため,不登校になっている子がいる可能性も,指摘されています(串崎,2018)。

そのため,「敏感性」という特性を理解し,支援を行うための,一助となるような研究を行いたいと思い,目的を設定しました。

 

本研究の目的

まず,本研究は男女別で行いました。

そして,結果として,大きく3つのことが示されました。

 

1つ目

中学生の時の対人関係での傷つき経験」と「現在の対人関係における敏感性」(否定的感受性:他者の自分に対するネガティブ感情への敏感さ)が関連していることが示されました。こちらは,男女とも同様の結果となりました。

中学生という時期は,友人関係が重要となります。そのような時期に,友人関係での傷ついた経験が多くなると,

傷つく→友人関係がトラウマとなる→他者が自分を拒絶していないか・・・と,警戒心が高まる(この反応はトラウマ症状と似ている特徴です)→敏感になる

→さらに傷つきやすくなる

といった相互関係が考えられます。

敏感性の高さ=トラウマによるもの

ということが本研究からいえるわけではありませんが,関連があることによって,こういった関係性も可能性として考えられます。

 

 

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2つ目

 

中学生の時の親からの受容経験」と「現在の対人関係における敏感性」(否定的感受性:他者の自分に対するネガティブ感情への敏感さ)が関連していることが示されました。こちらも男女とも同様の結果となりました。

発達の中で,親からネガティブな感情(いやだ,イライラする など)を受容してもらうことは,重要な経験です。しかし,親からの受容がされないと,見捨てられ不安が強くなります。そして,その経験自体がトラウマになることに加えて,親との関係性の特徴が,成長したあとのその人の対人関係でのパターンに繋がります。そのため,親との安心できない関係性が,大人になってから,親以外の他者との関係性も安心を感じにくくなるため,警戒心が高まり,敏感性の高さに関連します。そして,拒絶に対して敏感になることで,その個人は「いい子」となります。そういった表面的なふるまいによる「いい子」は,親から受容されにくくなる・・・といった相互関係が成り立つと考えられます。

 

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3つ目

 

女性の場合,「中学生の時の対人関係での傷つき」が少ない場合,「中学生の時の親からの受容経験」が多くなると,「現在の対人関係における敏感性」(肯定的感受性:他者の自分に対するポジティブな感情への敏感さ)が高くなることが分かりました。

 

 

 

 

親から受容される経験は,安心できる親子関係であるといえます。そのため,「優しそうな顔だと安心する」といった関係性が築かれている親子関係がベースとなります。大人になっても,他者のポジティブな表出を素直に受け止め,安心を感じることができるようになると,考えられます。

 

 

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本研究では,男性の場合,肯定的感受性(他者の自分に対するポジティブ感情への敏感さ)と「中学生の時の対人関係での傷つき経験」・「中学生の時の親からの受容経験」には関連がみられませんでした。

 

さいごに

 

専門的な研究ということもあり,理解するのが難しい,これどういう意味?,敏感性の他の研究ってどんな感じ?などの質問等があれば,以下のメールアドレスに連絡いただければ幸いです。

メールアドレス:

e175111m@st.u-gakugei.ac.jp

 

 

調査協力者の方々のプライバシーを守るために本研究で行ったこと

 

 

1.対象者等の人権への配慮

 本研究において本調査は匿名性を確保したWebアンケートを行い、回答された個人データは全てコンピュータを使って統計的に処理し、研究終了後は個人情報に配慮して適切に処分することとした。したがって、個人の情報がそのまま公開されることはなく、回答の内容から個人が特定されることはない。このことについて、協力者へアンケートサイト「Questant」のWebページにて理解を得る。

2.対象者等に不利益及び危険が生じないための配慮

 本調査への参加は強制されるものではなく、回答するかどうかは調査協力者の意思で自由に決められるものであるとした。回答しない、および回答を中断したとしても、協力者に不利益が生じることはないことはないということを、アンケートサイト「 Questant 」のWebページにて伝える。また、調査終了後得られたデータはパスワードを設定し、厳密に管理する。

3.対象者等に理解を求め、同意を得る方法

 本研究では、調査者の友人・知人にお願いし、SNSでWebアンケートのURLを拡散してもらい、調査協力者を募集する。研究についての説明は、Webアンケートのトップページにて調査協力者に伝え、回答をもって参加の同意を得たものとする。また、回答を完了した後でも、同意の撤回が可能であることもWebアンケートのトップページにて説明する。

 また、本研究では調査協力者に対して隠し事や虚偽の教示を行っていないため協力者に対するデブリーフィングの必要性はないと判断した。さらに、本研究の結果については共有リンクを作成し、結果のフィードバックを行うこととした。結果のフィードバックについては、Webアンケートのトップページにて、共有リンクのURLを貼り、指定した期間にアクセスすることで、見られるようにした。このようにして、調査協力者に対してのフィードバックを各自で行えるようにした。